2015年5月16日土曜日

アンティークバカラ イスパハン BACCARAT ISPAHAN

2017年10月26日更新

©Galleria Kajorica

1920-1960に一世を風靡したバカラのデコレーションの多いモデルの中でも極めて希少なイスパハン(ISPAHAN)です。
バカラの同時代の中でも後半の1940-1950年代に製造されていたらしく、植物モチーフと幾何学模様が組み合わされたハイブリッドな魅力のシリーズ。希少なモデルで売りに出る事は滅多にありません。

名前の由来
イスパハンという名は現在ではオールド・ローズの品種名やそのバラから名を取ったケーキの名前として有名になっていますが、本来はペルシャの古都市、エスファハーンのフランス名。

エスファハーンは現在のイラン都市ですが。当地で自生していた古代薔薇の株が1832年にヨーロッパに持ち込まれ、その洗練された美しさの香りの強い大輪のバラの名前になりました。このバカラのモデル名がバラの名前、古都市エスファハーンのどちらにちなんで付けたか確かな事は測りかねますが、バカラの同時期のモデルであるジェダがやはり中東の都市の名にちなんで付けられている事などから古都市エスファハーンに因んだと考える方が自然ではないかと想像しています。
©Galleria Kajorica


在庫状況や個々のコンディションはオークションページをご覧下さい。


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イスパハン(エスファーハン)は長いペルシャの歴史の中で何度も首都になった重要な古都市です。
街の歴史はササン朝ペルシア(226~651)の時代まで遡ります。ササン朝の王、第13代 ヤズデギルド1世(在位:399-420) の時代にヤズデギルド1世のユダヤ人の妻によりヤフーディア(エスファーハンの原型)が建設されイスファハンはペルシア帝国中央に位置する重要都市として位置づけられます。市内には 軍営都市ジェイ(シャハレスターン)とユダヤ人の街ヤフーディアの双子都市が存在し、 この二つを合わせてエスファーハンの街ができました。

その後ササン朝の最盛そして衰退後、ブワイフ朝時代(932 シーア派のブワイフ家がイラン・ファールス地方で王朝を建設。 945 ブワイフ朝がアッバース朝の都、バグダードを占領。更にセルジュク朝時代に1038年に トゥグリル・ベク(在位:1038~1063)が支配を確立したトルコ系スンナ派王朝が 1050年にエスファーハンを首都とします。

その後イル・ハン国時代に1256年に チンギス・ハンの孫フラグがイル・ハン国を建国し首都を現在のイラン西部のタブリーズに定め、その後更にアッバース1世(在位:1588~1629) サファビー朝の全盛時代1598年に イスファハンに再び都を移します。この時代イスファハンは 「世界の半分」(エスファハーン・ネスフ・エ・ジャハーン)と呼ばれるほ ど繁栄 します。
その後、カージャール朝(1796~1925)からイランの首都はテヘランへと遷都し現在に至ります。

1598年に イスパハンを首都に定め繁栄させたエスファーハンの最盛期のペルシャ王
サファビー朝のアッバース1世




原生地の名を取った古代薔薇イスパハン

Photo©kajorica
エスファーハンのシェイフ-ロトゥフォッラー-モスクのドーム



バカラのペーパーウエイト「イスパハンの庭園」
製造年代不明ですがエスファーハンのシェイフ-ロトゥフォッラー-モスクのドームのパターンに似ています。

上面から見たグラス イスパハン
ペーパーウエイト「イスパハンの庭園」のパターンに似ていますね。
ペーパーウエイトやモスクの天井の様な連続模様に出来なかったのは、製造上の理由でアシッドエッチングの型紙を分割する必要があったからでしょう。アシッドエッチングのパターンは一見全面に模様がちりばめてある様なミケランジェロもよく見ると4ブロックに分割されています。

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©Galleria Kajorica

アンティークバカラ イスパハン グラスL 
赤ワイングラス 直径9.4cm  H=9.5cm
満水容量 220ml

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©Galleria Kajorica

激稀アンティークバカラ イスパハン グラスM 7.5cm
白ワイングラス 直径7.4cm  高さ7.5cm
満水容量 110ml


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©Galleria Kajorica

アンティークバカラ イスパハン グラスS 
デザートワイングラス 直径6.6cm  高さ6.7cm

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©Galleria Kajorica

アンティークバカラ イスパハンクープグラスH7.5cm
  クープグラス 直径9.6cm  高さ7.5cm
満水容量 175ml

シャンパンクープグラスになりますがデザート皿などにも兼用出来そうです。

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さて、今年の夏休みはイランで3週間を過ごしました。かねてからこの目で見てみたかったペルシャ文化を満喫。イスパハンは観光としてもシーラズと並ぶメイン都市ですが、ツアー旅行ではない外国人観光客はまだ極少数で、土地の人たちも観光客スレしていなくて良かったです。

街の見所は街中央にあるイマム広場に多くあります。 
Photo©kajorica
 有名なエスファーハンのシェイフ・ロトゥフォッラーモスクは前評判通り美しく、想像していたよりこじんまりしていてとても落ち着きます。空間の配置は男女別のスペースがなく普通のモスクの造りとはだいぶ異なります。これは一般にはアッバース1世のハーレムの女性のためのモスクだったからだと言われているそうです。


 
 アッバース1世によって建設されたイマム広場の中央に位置するAali Qapu(アリ・カプ)宮の最上階ミュージックホール、デコレーションの壁が二重構造になっていて、意表をつく装飾で衝撃的と形容しても大げさではない美しさでした。王様のプライベートパーティーに使用されていたと言われ、音響も素晴らしいそうです。


アリ・カプ宮 迎賓室(? 中層階ホール)天井装飾も美しいです。





Photo©kajorica
アッバース1世によって1602年建設が開始されたシ・オ・セ橋
サファビー朝時代の建造物の中では最も有名な橋と言われています。


Photo©kajorica
アッバース2世によって1650年建設が開始されたカジュ橋
橋中央部分で王様が川面を眺めてゆったりと時間を過ごすスペースが作らてれいます。



Photo©kajorica
こちらはアッバース1世が商業を発展させる目的で1600年ごろ商才のあるアルメニア人を移民させて作ったアルメニア人居住区ジョルファのにあるヴァーンク(Vank)教会。
教会外側は極めて控えめなのとは対照的に、建物内部のペルシャ様式とキリスト教の融合された独特の目のくらむような装飾が非常に印象的です。これを見てアルメニアにも行ってみたくなってしまいました。


Photo©kajorica

名所旧跡の素晴らしさもさることながら、エスファーハンで最も驚きまた素晴らしいと思ったのは市民のピクニック熱。
このイマーム広場。世界でも屈指の広さです。(モスクワの赤の広場より大きい)

上の写真、猛暑の夏の夕方ですが日陰には早くもピクニックを始める人たちが見えるでしょう。夜になるとこの巨大な広場に所狭しと家族連れが繰り出して、毎夜楽しそうにピクニックをしているの、実に壮観でした。イランの人たちは懐っこいのでフルーツその他の食べのもの分けてくれたりしました。

噴水の向こう側に見えるのがシェイフ・ロトゥフォッラーモスクです。



Photo©Arad Mojtahedi
現在のイマーム広場
 (旧通称:「メイダーネ・シャー ميدان شاه Meydān-e Shāh 」(王の広場)
正式名称:「メイダーネ・ナクシェ・ジャハーン میدان نقش جهان Meydān-e naqsh-e jahān」
(世界の肖像の広場)

広場裏の民家の入り口
郊外は近代的な建物も多いですが、逆に市の中心部の裏通りはタイムスリップしたようです。

ジャーメモスクの広い中庭で夕べのお祈りのためにカーペットを広げる人

郊外のゾロアスター教の丘から見るエスパーハンの街





エスファーハン出身の著名人としてはやはりこの人、ソラヤ。

ソラヤ・エスファンディヤーリー・バフティヤーリー(1932年 - 2001年)
父はイラン南部のバフティヤーリー族の貴族で在西独大使、母はドイツ人。

エスファハーン生まれで「エスファハーンの薔薇」の異名を持った、イラン最後のシャーモハンマド・レザー・パフラヴィーの二人目の王妃。


継承者をつくることができず7年で離婚しますがその美しさは伝説的です。

今回旅行に際しイランの歴史を勉強し、革命に至る背景を作ったイラン最後のシャーモハンマド・レザー・パフラヴィーにはどうも好感が持てないので以前掲載していたご成婚の写真は削除することにしました。
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2016年9月17日

久しぶりにバカラのプレス向けサイトを見ていたらISPAHANという同名で、1878年の万博に出展されたデキャンターのリエディションがリリースされていました。

上記長々と書いたアールデコスタイルのイスパハンとはまた趣が異なり、アールヌーボー以前にデザインされたこの品、古典的な装飾で赤と金を基調としたが美しい品なのでご紹介します。

100点限定の製作で番号入りだそうです。

 Photo  Courtesy: Baccarat 
 Photo  Courtesy: Baccarat