2015年6月18日木曜日

アンティークバカラ 樽型ローハン BACCARAT GOUVIEUX

2017年4月11日更新

©Galleria Kajorica

日本で大人気の通称樽型ローハン。ローハンと同じパターンのエッチングが施され樽型をしたノーステムのグラスのシリーズである事から日本では樽型ローハンという判り易い呼び名がついていますが、このモデルの本当の名前はGouvieux グーヴィユーといいます。日本人にはこの発音、難しいですよね。

今まで入手した事のある範囲でサイズは最小で高さ50mmのリキュールグラスから、最大で110mmのオレンジエード(ジュ―ス用)グラスまでサイズのヴァリエ―ションが揃ってるのが判っています。
アンティークのエッチングは現代のそれに比べS字の連続模様がより太く深いのが特徴です。 


名前の由来
名前の由来を調べてみましたが、めぼしい歴史上の人物等も見当たらず、想像ですが町の名に由来したのではないかと思います。グーヴィユーの町と隣接するシャンティイについてこの項の文末に写真入りで詳細を加筆しましたのでご興味のある方はご覧下さい。


バカラ1933年カタログのローハンパターンを施した三つのモデル

在庫状況や個々のコンディションはオークションページをご覧下さい。


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©Galleria Kajorica  
アンティークバカラ樽型ローハン デキャンタ
直径 11.0cm 高さ24.5cm (ストッパー込み) 高さ20.2cm (ストッパー無し)
首下までで約950ml


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©Galleria Kajorica  
アンティークバカラ樽型ローハン小型デキャンタ美品
直径 8.0cm 高さ18.0cm (ストッパー込み) 高さ14.5cm (ストッパー無し)
首下までで約360ml

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©Galleria Kajorica
アンティークバカラ樽型ローハン グラスS
(古いタイプのマークあり1936年以降製造)
直径 4.5cm 高さ6.8cm 
満水 約80ml 
デザートワイングラス用日本酒にも良い大きさです。
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©Galleria Kajorica 
アンティークバカラ樽型ローハン グラスM
(古いタイプのマークあり1936年以降製造)
直径 5.4cm 高さ7.8cm 
満水 約130ml
白ワイングラスです。
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©Galleria Kajorica          

 アンティークバカラ樽型ローハン フルートグラス
(古いタイプのマークあり1936年以降製造)
直径 5.5cm 高さ9cm 

細身のプロポーションが魅力のフルートグラス
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©Galleria Kajorica      

アンティークバカラ樽型ローハン グラスL
(古いタイプのマークあり1936年以降製造)
直径6.6cm 高さ10cm 

ウォーターグラスです。ジュースにビールにと活躍するサイズです。


”似てるけど違うもの” 

似た形状のデキャンタの比較です

ジルベール、ゴルフジュアンのデキャンタ、本体部分はグーヴューと同じ型を使用しています。

違いはストッパー。ジルベール、ゴルフジュアンのデキャンタはコロンとした小さいお団子のストッパーグーヴューは平たいメダルのようなストッパーに特徴があります。

写真はグーヴューとの比較です。首の長さ太さが若干異なりますが製造工程上あり得ることです。



Dany Sautot著のBaccarat Una manifacture francaiseにはグーヴューと同型でエナメル彩のものが掲載されていて1921年のリリースとされています。


ローハンのエッチングが施されてグーヴューという名が付けられたのはいつ頃でしょうか?


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名前の由来

グーヴィユーの緑の中の馬舎         Photo©P.poschadel

Gouvieux グーヴィユーの町

Gouvieux グーヴィユーはパリの北約40キロに位置する町。 オワーズ川沿いの緑豊かな森とグビューの池と言われる池が幾つかあり、ハイキングコースなどもあります。人口9000人程度の小さな町ですが石器時代から人が住んでいたといいます。

 世界的に有名なシャンティ城のあるシャンティイ(Chantilly)*1と隣接していて鉄道駅を共有しています。パリ北駅からPER (Réseau Express Régional) のDラインで約25分で到着します。

*1)シャンティ城内には一流の収集品を収蔵するコンデ美術館があり、またシャンティイの町は競走馬の飼育でも有名です。ホイップクリームの一種、クレーム・シャンティイはこの土地生まれ。

因に生クリームのホイップクリームは16世紀のイタリアで最も古いレシピが見つかっていて、一般的にイタリアで生まれたと言われいています。それよりも少し前にメレンゲ、卵白を泡立てたものはイギリスで生まれたのですが。

フランスのアンリ二世と結婚したフィレンツェ共和国(現在のイタリア中部フィレンツェ周辺)出身のカテリーナ・デ・ メディチ(1519-1589 仏語読みでカトリーヌ・ド・メディシス)が当時のフランス料理に満足出来ずフィレンツェから料理人を呼び寄せたためフランスに伝わったとされています。
ローマ教皇を親戚にもつカソリック教徒の彼女はサン・バルテルミの虐殺プロテスタントを大量虐殺した事でフランス史に悪名を残したものの、芸術への愛好と、特に美食家でフランス食文化への貢献が大きかったことは世界的に認められています。当時上流階級でもまだ手掴みで食事をしていたフランスにフォークを導入したりの他の食器類や食事作法を持ち込んだのもカテリーナ・デ・ メディチだというのは特に有名な話です。


そうしてホイップクリームがフランスに伝わった約一世紀後 シャンティ城のコンデ公ルイ二世の調理人フランソワ・ヴァテールによりクレーム・シャンティイが考案されたとされています。

また、現在のクレーム・シャンティイと普通のホイップクリームの区別の定義はクレーム・シャンティイは最低30% の脂肪分と最低15%の糖分が含まれる事、だそうです。


グーヴィユーの森の中の中世の城の塔跡 Photo©P.poschadel

シャンティイ城 Photo©Mattis


コンデ美術館収蔵 ラッファエロのタブロー トレ・グラツィエ (1503-1504)