2015年5月16日土曜日

アンティークバカラ ルリ BACCARAT LULLI

2018年6月22日更新






アンティークバカラのモデルの中でも最も人気のあるモデルの一つと言えるルリ(LULLI)シリーズ。
バカラのアシッド・エッチングのモデルの中では最も優雅なグラスだと私は思います。
アシッド・エッチングの他のモデルと比較してクリスタルがやや薄めであることもありとても繊細な印象のグラスです。京都の高級料亭等で好んで使用されると聞きますが、そんな話も納得の行く上品さです。

名前の由来
Lulliという名はイタリアのトスカーナ地方(フィレンツェ、ピサ、シエナ等など多くの古都を擁するイタリア中部の州)に多い苗字でこのモデルはルイ14世の宮廷楽長だったジョヴァンニ・バッティスタ・ルッリ(1632-1687イタリア、当時はトスカーナ大公国出身の音楽家、イタリア語表記Giovanni Battista Lulli)にちなんでつけられました。たまにLullyとY終わりで書かれるのは、フランスに帰化したルッリのフランス名がジャン=バティスト・リュリJean-Baptiste Lullyだからです。ちなみにバカラの同型同模様でロングステムのモデルはスカルラッティという名がついていて、その名はドメニコ・スカルラッティ(1685-1757 イタリア、当時はナポリ王国出身の音楽家Domenico Scarlatti)にちなんでつけられているので、バカラはこのシリーズにバロック音楽家の名を付けようと考えたと解釈するのが適切でしょう。

そう思うと優雅な模様がバロック音楽的に見えて来るから不思議です。
文末にルッリとスカルラッティの音楽リンクも追加しました。バロック音楽にご興味のある方は是非聴いてみてください。




1933年 カタログ




LULLI 花瓶フラワーベース
直径154mm  高さ197mm

口広で下部の内径が86mmなので白ワインクーラーにも使えそうな佳品です。但しシャンパンボトルにはやや小さめでタイプにより氷で底上げが必要です。

さて、このモデルの名になっているルッリとはどんな音楽を作曲していたのでしょうか?リンクをご紹介します。

Lully - Idylle Sur La Paix - Air Pour Madame La Dauphine

バカラのルリは人気の高いアイテムですし、私も好きなのでこの項目もルッリの生涯などを紹介しもっと充実させたいのですが、このルッリという人物、肖像画からも、経歴からも煩悩のとても強そうなタイプで、あまり好きになれません。。。普通はイタリア名(ジョヴァンニ・バッティスタ・ルッリ Giovanni Battista Lulli)よりも、活躍し帰化したフランスでの名前ジャン=バティスト・リュリ(Jean-Baptiste [de] Lully)で呼ばれています。
フィレンツェの粉挽き職人の家庭に生まれ音楽を独学し、1646年ギーズ公の公子ロジェに見出されてフランスへと連れられ、ルイ14世の寵愛を受けてフランスの宮廷音楽家として権力を欲しいままにしする一方、リュリはその放蕩でも悪名高かったのです。



ジョヴァンニ・バッティスタ・ルッリGiovanni Battista Lulli)


ちなみにロングステムのモデルの名になっているドメニコ・スカルラッティ(Domenico Scarlatti)のご紹介もしていますのでスカルラッティの項目も是非ご覧ください。
手前味噌ですがこの項目は今までのブログの中で一番よく当時の状況を描けた項目だと思っています。




ドメニコ・スカルラッティ(Domenico Scarlatti)

グラスはステム無しのLulliの方が好きですが音楽はScarlatti の方が洗練されていてグラスにも似合っている様に私には思えますが、いかがでしょうか?

実はスカルラッティという姓では、ドメニコ父親のアレッサンドロスカルラッティ(1660-1725)も有名です。が、どちらかといえばドメニコ・スカルラッティの方がメジャーですし、ジョヴァンニ=バッティスタルッリとドメニコ・スカルラッティの間にはイタリア生まれで外国の宮廷音楽家だったという共通点があることから、ルッリはフランス宮廷、ドメニコ・スカルラッティはポルトガルの王女の音楽教諭から、王女の嫁ぎ先のスペインの宮廷音楽家になりました。)この場合はドメニコ・スカルラッティを指しているのだと思います。