2017年8月10日木曜日

アンティーク バカラ パリ  BACCARAT PARIS



ジルベールの同型に米粒状のカットないタイムレスなデザインです。
同じカットのロングステムヴァージョンもあり、そちらもパリと呼ぶ人が多いですが、ロングステムの本当のモデル名はマレンゴ(MARENGO)になります。

ある文献ではパリのカットだけでなくジルベール本体もジャン・リュースの作とするものもあるのですが、本当でしょうか?裏ずけが取れていないのでご存知の方かいましたらご教授ください。

*画像のデキャンタのストッパーはオリジナルの形状ではありません。








エピソード
普通は名前の由来を書きますがフランスの首都「パリ」については、日本の雑誌のほうがよほど詳しく有益な情報が出ていると思うので省略し、この項目ではこのグラスをデザインしたジャン・ルースについて少し書きたいと思います。

ジャン・リュース(Jean Luce)
ジャン・リュースは日本ではあまり知名度がありませんが、作品写真を多数拝借した1stdidsのサイト(https://www.1stdibs.com/creators/jean-luce/furniture/)をご覧いただければわかるように、彼の作品は死後50年以上経過した今、一流のファインアーティスト並みの値段で取引されている重要な作家です。


ジャン・リュース(JEAN LUCE 1895- 1964)は1895年パリ生まれの陶磁器ガラス器のデザイナー。ジャンは陶磁器店を営む父親ポール・リュースの元でテーブルウエアに親しみながら育ちます。16歳の時に初めてガリエラ・ミュージアムに作品を展示し、その後数々の作品を発表し続けます。

ジャン・リュースは弱冠18歳で1913年の・ペティ・パレで行われた重要なアートの展示会サロン・ドートンヌ(Salon d’automne)にも参加しています。

1912年サロン・ドトンヌ会場風景

ちなみにサロン・ドートンヌは1903年から始まったアート展示会でセザンヌ、ゴーギャン、マティス、ピカビア、ピカソなどの一流著名画家も参加しています。当時大変に保守的だと考えられていたフランスのサロン(フランス芸術家協会のサロン展及び国民美術協会サロン展など)への反抗があったと言われていて、現在でもパリが芸術の都といわれるのもサロン・ドートンヌ展があってのことだったととさえ言われていいます。
サロン・ドートンヌの主催元はサロン・ドートンヌ協会(Société du Salon d'automne)で現在も毎年秋にパリ市内にて開催。多くのサロンが衰退する中、現在も企業スポンサーを得て、単独での大会場開催で、個人アーティストの応募に応える数少ない国際サロンのひとつです。

ジャン・リュースが参加した1913年のSalon d’automneはキュビズムが主流だったと言われています。

1913年出展されたFresnaye Conquestの絵画



1937年サロン・ドートンヌポスター
©Georges Dufrénoy


さて、ジャン・リュースの話にもどりますと、ジャン・リュースは1923年、一家の店をグラン・パレにほど近いRue de la Boetieに移転しさらにそのプレステージを高め、アールデコをアールデコならしめた1925年の万博、ジュバリエがバカラ内で確固たる位置を確立した通称アールデコ博で、弱冠30歳で審査員を務めています。


ジャン・ルースが1925年の万博に出展したお皿

1931年には一家の店の経営を掌握し、1935年がヨーロッパ大陸とアメリカ大陸を結ぶ客船ではフランス最大のCompagnie Générale Transatlantiqueの豪華客船の一等の陶磁器、グラス類、銀器類の食器デザインををを引き受けるなどビジネスマンとしてもとても優秀なデザイナーだった様です。

Compagnie Générale Transatlantiqueの豪華客船で
シカゴの万博に行きましょう、という広告
collection of David Levine (http://www.travelbrochuregraphics.com)


Compagnie Générale TransatlantiqueのためにJean Luceがデザインしたコーヒーカップと灰皿



さらにジャン・ルースは1930年代このパリの様にバカラやサン・ルイなどの一流クリスタルメーカーともコラボレーションしています。
1937年にはUAM (Union des Artistes Modernes・モダンアーティスト・ユニオン)のメンバーに。
1949-50年頃パビリオン・デ・マルサンで開催された「Formes Utiles」展のガラス製食器棚セクションの責任者でもありました。


1950年代にはソラ・フランスのためにステンレス製プレートをデザインしています。サン・ルイのどれがルースの作品か調べてみましたがわかりませんでした。もしご存知の方がいましたらご教授ください。


また、パリのEcole des Arts Appliqués (応用芸術学校・現在のENSAAMA =L'École nationale supérieure des arts appliqués et des métiers d’art / 国立応用芸術工芸学校)にて教鞭をとり、セーブルで技術顧問も務めています。


以下はジャン・リュースのデザインの数々。フランスのデザイナーにしては線が太く、ちょっとイタリア的で男性的な大胆な造形ですが、それをうまくデコレーションと組み合わせています。まさしく時代のテーマに沿ったデザインと言えるでしょう。
(画像はhttps://www.1stdibs.com/creators/jean-luce/furniture/から拝借しています。)










 ジャン・リュース(Jean Luce)のサイン